ゆざわ商事のブログです。「トコイテ」はゆざわの方言です。意味は「なんちゃって」。
2012年7月6日 [金曜日]
権現堂の弥三郎ばさ
広神村の昔話「権現堂の弥三郎ばさ」です。
皆さんご存知でしょうか?
方言の話しで盛り上がっていたときに、鈴木が「弥三郎ばさ、知ってますか?」
「ほうら、悪い子になると、弥三郎ばさがさらいに来るぞ、良い子になって早く寝れいや」と子供のころにはこんなことを言われるらしい。
田村、小野塚は知っているとのこと。
当然、五十嵐、mは知るはずもありません・・・が、なぜか私も初めて耳にしました。
何と絵本を持っているとのこと、早速拝見。
著者 青山幸子
画 富永政美智
発行・企画 広神村観光協会
とんとんむかしがあったと。
むかし、大崎村(現・大和町)てどこへ、弥三郎という猟師が住んでいたと。
弥三郎の家は、弥三郎と弥三郎のかかとせがれの三人暮らしであったと。
弥三郎は猟師としては、なじょんかうでがよくて、まいんちまいんち猟にでかけては、いっぺえ獲物をとってきて、暮らしをたてていたてんがの。(本文抜粋)
ところがある日、弥三郎は雪の山に猟でかけて帰って来なかった。かかはせつながったけど、せがれを一生懸命に育てた。
せがれも大きくなって腕のいい猟師になった。嫁もろて、子もできてよかったと。
だけど、やっぱり吹雪の日に山に入って帰ってこんかった。嫁はせつながって、死んでしもたと。
子が残されて、困ったばさは、子の乳をもらいに歩いたと。だけど、あのうちは代々殺生ばっかりしたから不幸が続く・・・とみんな村八分(仲間はずれ)に・・
ばさも子どももひもじくて、泣く泣く布団にくるまっていた。で、バサは抱いて寝ているうちに孫を食うてしもた。
村のしょが様子を見にいくと、口が耳までさけて、血だらけ、眼はぎょろりと鬼の形相に。
今度は夜な夜なでてきては村の子どもをさらって喰らう。
村のしょは、焼き討ちを。
すると大空に舞い上がり姿を消す。
以後、権現堂の洞穴をすみかにしてあっちこちの村の子供をさらっていたと。
鬼ばさになる前は、真淨寺に信心深く菩薩まいりをし、菩薩寺のねっこの地蔵様の境内の石に腰を降ろして休んでいたそう。
今でもその石は残っているらしい。
吹雪の晩になると「ほうら、ほっけの晩は鬼ばさがくるぞ。いいこになって、早く寝れいや」って言われたりして、いつまでもおっかながられていた。
やがて時代が下って、偉い坊さんに諭されて仏心に目覚めて「妙多羅天女」の名を授かったと、チャンチャン。
鬼子母神伝説の変形バージョンのようですね。
いやぁー、知らなかったなー。
でもなんだかせつないお話ですね。